2020/09/05 13:00

遊雀師匠はウチの落語会にとって一番の恩人だ。

師匠が居なければ、とてもとても。
こんな濃密な会なんて続けられていない。
ウチで何度観たか、師匠のとんでもない高座を。
アタマがぶっ飛ぶような、すごい落語を。
何度、心を持っていかれたか。
また、会の後の打ち上げの盛り上げ方。
これもホントに素晴らしく。
残ってくださったみんなを楽しませようと一所懸命。
どれほど助かっているか。

いつも師匠はみんなにおっしゃる。

「ゆにおん、また来てね。飲みに来るだけでもいいんだからさ!頼むよ!」
「みんな、ゆにおんをよろしくなあ!落語会もさ、また来てヨ!」

いつだって、お客さんひとりひとりを入口までお見送りしてくださって。
送り出しと店の片付けがひと段落してから、私も座らせてもらって師匠と乾杯。
その時間が、いつもたまらなく幸せ。
翌日お仕事が早くても、深夜までゆっくりしてくださる。
なんか、ふわふわ幸せなんだ。

遊雀師匠と出会ったのは、もう10年以上前。
まだ私は、30そこそこだった。
懐かしい。
(そんな日もあったんだなあ。まだ髪もふさふさしてたなあ、オイラ。痩せてたしなあ、、。今はもう、、えーん。)

当時、千葉で会をされていた「なまらく」さんのお手伝いによく伺っていて。
ウチでも少しずつ「なまらく」プロデュースで会を始めていた。
JR千葉駅から少し歩いたところにある「きぼーる」という建物で行われていた落語会。
だいたい、日曜日だった。
当時、まだ実家の東陽町に住んでいた私。
錦糸町までバスで出て、総武線に乗って、どんぶらこどんぶらこ千葉へ。
ちょっとした心地よい小旅行。
「きぼーる」に着いてからは、「なまらく」スタッフのみなさんと会場設営。
受付の準備、チラシの用意。
落語会をやるノウハウが沢山詰まっていて、いつも勉強になった。
その「きぼーる寄席」に遊雀師匠が出られる日があったのだ。

当時、私も落語をかじり始め。
まだ、いろいろと良く分かっていなかった。
寄席にも出かけていたが、鈴本だけ。
落語協会ばかり観ていて、あとは談志師匠、志の輔師匠くらい。
芸協は歌丸、昇太、小遊三くらいしか知らなかった。
そんな訳で、遊雀師匠のこともまるで存じ上げていなかった。
当日、設営をして、貼ってあるチラシを観て、
「ああ、この人が遊雀さんなんだあ。ふむふむ。」
なんて認識でした。

設営完了。
受付開始。
モギリも終えて、開演時間に。
前座さんが高座に上がる。
そのタイミングで、私もちょっとひと段落。
喫煙所に向かった。
当時、葉巻をまだ吸っていた。
でも、人前ではカッコつけてるみたいでちょっと嫌で、葉巻はバーや自宅でしか吸っていず。
普段はセブンスターを持ち歩いていた。
(セブンスター、美味しかったなあ。なんだかんだウマイんだよなあ、今はもうタバコ吸っていないが、一番美味しいのはセブンスターだった。書いていると吸いたくなるなあ。)

「きぼーる」の会場は確か13階くらい。
喫煙所は見晴らしがとてもよく。
千葉市内をゆったり見渡せる。
ここの喫煙所が大好きだった。

天気のいい日で。
プカプカとタバコ吸って、横の自販機で買った缶コーヒーを飲んで外をぼんやり眺めていると、ふっと背の高い人が喫煙所に入ってきた。
「あ!」
遊雀師匠だった。

師匠は、スタッフ証を首から掛けている私を見て。
「あ、お疲れ様ですー。」とにこやかに挨拶された。
(やっぱり、この人は遊雀さんだ、、)
でも、落語にまだ詳しくないその頃の私は、全然、師匠の情報を持っていなかった。
(せっかくの機会なのに、何も話せない、、)
仕方なく、なんとなーくの世間話をしたのをうっすら覚えている。

「駅から結構遠いですね、ここは」
「今日は天気がいいですね。」
なんて。

そんな話から、どんな流れでたどり着いたのか分からないんだけれど、出身校の話になり、なんと同じ高校の出だと分かる。

「え!!市川!同じじゃねえか!後輩か!?」
「えーー!!師匠、先輩ですね!!!びっくり!!」

もー、喫煙所できゃーきゃー言いながら笑ってしまった。
それが、師匠との出会い。

その日、師匠の高座を観て。
「なんだこりゃあ!!スゲー!!」
ってひっくり返ったんだ。

打ち上げの席。
いろいろと師匠とお話させてもらって。
その時に頂いた言葉。

「いつでも、オイラを呼ぶんだよ。小さい店だから二ツ目しか呼べないなんて思うこたあない。オイラが行くからさ。ギャラなんてどうでもいいんだよ。オイラはいいんだ。後輩がさ、頑張ってる店でさ、いいんだよ。そこで、しっかり本気でやるからさ。そうしたら、次から出る人がネタ帳見てさ、「遊雀がコレやってんだ、、」ってなったら、誰も君の店を舐めない。出るみんながさ、本気でやってくれるはず。呼びたい人がいたらさ、言って。オイラがアタマを下げるから。落語をさ、若い落語家をさ、応援してあげて欲しいんだヨ。よろしく頼むよ。だから、絶対にオイラを呼んでね。本気でやる。いつでも声掛けるんだぞ。わかったな!遠慮するなよ!」

三遊亭遊雀が、酔っていながらも本気で話してくれた言葉に感銘を受けないわけがない。
嬉しくて嬉しくて、涙が出てきた。

帰り道。
ぼんやりしながら、総武線。
幸せな時間だった。
そのあと、すぐに「なまらく」古川さんに話して遊雀師匠をウチに呼んでいただいた。
あの時は菊六(今の文菊さんですね)さんとのふたり会。
その日が、遊雀師匠の「ゆにおん」初登場だった。

そして、一昨日。
一蔵さんとの会。
これも、素晴らしかった。
素晴らしいなんて言葉が陳腐に感じられるくらい。
うっとりするような、いい時間だった。

タバコなんて、男子にありがちな、なんとなくカッコつけて吸い始めただけなんだけれど。
人生を振り返ると、師匠と出会うためだけに吸っていたのかもしれない。
あのとき、「きぼーる」の喫煙所に行かなければ、師匠と知り合うことはなかったかも。
そうしたら、今の「ゆにおん」の落語会は絶対にありえない。
落語会を通じて知り合った大切な人たちとの出会いも、なかった。
僕の人生は、こんな豊かにはならなかっただろうナア。

何があるか分からないのが人生。
意味ない事なんて、ないんだ。
子どもに伝えなきゃいけないことが沢山あるや。
これからも、師匠にはお世話になっていくだろうなあ。
ちゃんとお返ししなければ、、。
受けてばかりの素晴らしい恩が、しずしず貯まっていく。

さあ、今日も恩人中の恩人。
こしら師匠と志らら師匠の「Hallo 中堅」が16時からです!
そして、こしら・ふう丈ふたり会が18時半から!
お楽しみにー!!(⌒∇⌒)