2021/10/22 11:10

柳家小三治師匠が先日亡くなられた。

お風呂に入られて、出た後にお部屋で亡くなられていた、と。

80歳過ぎても全国から引っ張りだこ。
もちろん、仕事もこの先入っていて。
長い間、リウマチの治療などで飲まれる薬はたくさん。
とてもしんどかっただろうな、、と思うけど。
最期はそんなに苦しまれなかったのかな。
談志師匠のように、声が出なくなるなんて残酷な最期があるなかで、小三治師匠はとても幸せな死に方だったと思う。

私は落語を聴き始める前から、「柳家小三治」の存在は知っていた。
写真見ただけで
「うわあ、良い空気の人だなあ。この人、きっと面白いんだろなあ」
なんて思ってた。
その後、自分が落語にどっぷりハマるなんて思わなかった。
えいっと、その時に行ってりゃ良かったなあ。
まあ、タイミングではなかったんだな、きっと。

本格的に聴き始めてから、柳家小三治の高座に触れたが、まあ驚いた。
「なんだこりゃ、、」
と。
声、間、表情。
すべてが積み重ねられた技術なんだろうけれど、一分の隙もなく。
そして、それは堅苦しい「芸」ではまるでなく。
気楽にアハハと笑える落語だった。

まくらから、少しずつ笑いに引き込んでいき。
噺が終盤に入る頃にはドカンドカン会場が揺れるほど笑わせて。

「なんだ、このじいちゃんは!すげー!かっこいい!」

もー、とにかくびっくりした。

それから、どれほど聴いたろう。
とにかく、通った通った。
どれもこれも、素晴らしかった。
いま生きている人の中で、文句なしに最高峰の落語を観せてくれる人なんだもん。
観なきゃ、ソンソン。
人間国宝になってから「拝観する」なんてみんな言っていたが、まさしくその気持ち。
目に、耳に、心に刻み込むつもりで、聴いていた。

自分がこんな驚いたのは先代・圓歌師匠と小三治師匠だけだなあ。
もちろん、感情を持っていかれたり、すごい高座に椅子から立てなくなったりなんてことはいくらでもあるけれど。
「びっくりした」という感情は、圓歌・小三治が断トツ。
もう、お二人とも、いなくなってしまったよ、、。
うう、、(T_T)


子どもが生まれて、時間があまり取れなくなり。
落語会に通うことも少なくなってしまった。
そんななか、カミさんに
「小三治師匠、観たいねえ!」
なんて言ったら、
「私はもう良いんだ」
、と。

カミさんは、落語の世界で働いていたこともあって、私なんかと比べ物にならないほど本物を聴いている。
そんな中で、「もうこれ以上ない」というくらいの柳家小三治の落語も聴いている。
それを自分の大切な宝物として取っておいて、更新したくない、と。
なるほどなあ、、。
最後に目に焼き付けておきたいって考えもあるけれど。
カミさんのような考えもあるんだよなあ。
そんな訳で、自分もアタマの中にしっかり記憶されている小三治ベストを思い浮かべた。
「うん、、。これを大切にしておくのも、悪くないナ。」
そういう経緯で、ここ何年かはあえて観に行かなかった。
晩年の師匠周りでいろいろと嫌な話を聴くのも、本当に辛かったし、、(T_T)
私も、自分の中の記憶を大切にしたかった。

心に残っている小三治師匠はいつだってピカピカ輝いている。
袖から出てくるだけで、「うわあ、、」って。
ちょっと首かしげているような佇まいで座り。
何を言っても、ウフフって笑っちゃって。
そんなこと思い出してにやにやしてしまう。

あー、どんどん、レジェンドたる人が亡くなってしまう。
とても、さびしい。
でも、それは仕方ないこと。
時の流れには誰も逆らえない。

でも、今の落語家もすごいもんな。
ウチに出てくださっている方なんて、みんなとんでもない。
だから、小三治師匠が亡くなっても、「寂しいなあ」という気持ちだけで通り過ぎることができる。
研鑚を積んで、新しく歴史を作って行っている現役世代のおかげです。

いま、お付き合いしている人たちのなかで、ちゃんと長生きすれば人間国宝になる方もいらっしゃる。
その過程を楽しめたら、また幸せだ。
これからも、どんどん落語を聴こうっと。
講談も、浪曲も、ね。
応援していこう。
後世に継承していく、伝統芸能の強さ。
みんながオンリーワンなんだけれど、ジャンルが途絶える訳では全くないんだよなあ。
これは、すごいことだ。

小三治決定版が出たら買っちゃうなー。
かなり高額でも買っちゃうなー。
偉大な人だった。

もし、もし、私が長生きすることができたら、

「ワシはのう、十代目の柳家小三治をたくさん観たんじゃー。凄かったぞー」

なんて自慢できるなあ。
そんで、
「今の芸人はダメじゃなあ、、。誰も小三治には敵わんー。」
なんてボケたことを言わないように!
そんな感度の鈍いバカな老人ではなく、ちゃんとしたじいちゃんになりたい。
その頃、落語界を席巻している才能を、
「わー、これはすごいのうー!」
と評価できる感性を持って年を重ねていますように。
キチンとした客でいるために頑張らなくちゃなあ。

楽しい時間をたくさんありがとうございました。


さあ、今日はraku-bang落語会!
今日のメンバーは私にとって一番ホッとする。
どんな会になるやら、楽しみです(⌒∇⌒)
会場のチケットも、まだございます。
配信チケットも、どうぞー!

雨だけど、がんばろーっと。